シェフの戯言 黒いページ

リストランテ・ロアジのまわりで起きた様々な出来事を少し辛口につづってみました。

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記憶に残る朝飯。フォー

スタインベックの短編集に『朝飯』という傑作があった。

アメリカ南部の農園に帰ってきたのか、訪れたのか解らないが
一人の若者に綿花畑で働く農夫が
朝飯をご馳走してやる話しだったが
その脂の中ではぜるベーコンやパン、コーヒーのうまそうな香り
ただ、それだけの話しが10ページにも満たない、短編と言うより
掌小説と呼んだ方が良い様な短さで綴ってあった。
読んだ後で、唸ってしまったほどに見事。 でした


昔、パリで不良外人をしていた頃、
明け方まで遊び呆けて、一人暮らしの安ホテルに
帰る道端で、一人の妖精に会った。

彼女は私を認めて、にやりと笑い
「チャーワン#$&=”!=&#$”」?と話しかけてきた
何だか小鳥がさえずっているような言語
中国語に似てはいるものの違っていた。

「パルドン マドモワゼル ジュ ヌ コンプランパ シノワ」
(お嬢さん悪いけど中国語は解りません)と言うと
突然完璧なフランス語に切り替わり、「ごめんなさいタムさんじゃないんですね
あなたがあまりにも私の女友達のお兄さんに似ていたもので間違えました
それに私が話しているのはベトナム語で決して中国語ではないわ」。
ときっぱり
彼女の名前はホワさん、ベトナムでは日本の花子や洋子と同じぐらいポピュラーな名前です。
(ベトナム語で花はホアになります、私は彼女をハナと呼んだ、
なぜか私はタムにされてしまいましたが)


「中近東の人には良く間違えられるけど、ベトナム人に間違えられたのは初めて」。と
伝えると、ゲラゲラ笑って所で何人なの?
チュニジア人?モロッコ人?
パリジャンだと、答えたらあなたがパリジャンなのは解るけど
オリジナルは何処なのと、聞くので「日本」。とだけ答えた。


「時間ある」?。と聞くと「少しだけなら」。と言ったので
猛烈に眠かったけど二人でカフェに行き
延々と話しをした、細い樹の上で出会った二匹の昆虫が
触覚を二回コツコツと合わせただけで
すぐに、お互いを理解したように打ち解けた。


何度か逢瀬を重ねていつの間にやら都合の合う
週末はどちらかの、家に泊まると言った
いかにもフランス的な生活が始まった。


彼女はその時はまだ、倒産していなかったパンナムの
キャビンアテンダント、実家はベトナム料理屋を2軒も
経営するやり手のご両親、お兄さんと、妹が居た



何度か彼女に連れられて、お店で食事をご馳走になって
色々とお話しを聞いているうちに
それまでは、皆目知らなかったベトナムとフランスと日本の関係
などが少しずつ解ってきた。
なぜ、フランスにベトナム人やカンボジア人が多いのか
ヴェトミンとヴェトコンはどう違うのか?
この100年インドシナ半島で何が起きていたのか?
枯葉剤で今も苦しむ人たちが 沢山いることも
すぐ近くなのに何も知りませんでした。

「カフェオーレにクロワッサンも良いけど ベトナムの朝ごはんて何を食べるの」?。
ある晩そう訊ねると、彼女はニタニタ笑って
「朝はファ(フォーの事)かチャオ(お粥の事)よ、食べたいの」?。
と珍しく言ってくれたので(殆ど料理はしない方でしたので)是非と言ったら、
「今日は何も無いから 今度お店からかっぱらってきて作ってあげる」と。嬉しい返事。
で、次の日曜の朝 店からくすねてきた牛のブイヨンにニョクマム
塩、味の素で味付けして生の牛肉と玉葱を薄くスライスして
ミント、シャンツアイ、小葱をちぎる
1時間水に浸けて戻したクイティオ・セン・ヤン(きしめん状の麺)を
さっと茹でて、なぜかカフェオレのどんぶりに入れて
先ほどの薬味と牛肉をのせ、熱々のスープを注いで
サイドにダラット野菜を沢山そえる。
(ヴェトナムのダラット市は高原で 野菜の名産地、ベトナム料理に添えられる生野菜をパリではそう呼ぶ、決してダラット市から来た野菜ではないけど)


麺は、すすりませんでしたが(彼女は一応フランス人らしいので)
麺を食べ、生の牛肉のスライスは熱々のスープで
しゃぶしゃぶ状になり、ミント、香菜、小葱との香りの
組み合わせも素晴らしく、途中からダラット野菜をスープに
沈めて食べろと言う、生でも無し温野菜でもない温かいサラダ?
未経験な味が変化しながら持続している、はっきり言って
とても美味しい、開高大兄ぐらい言葉を操れたら
もっと、素晴らしい描写ができるのに。
なぜか、パリのアパルトマンでヴェトナムの朝ごはんを
食べた不思議な朝でした。



このフォー 最近は殆ど作らなくなりましたが 4年前ぐらいまで私の店の賄いで良く作りました。
そのフォーの名前は『フォー・ダイ』。と言います。


それから、1年後彼女とは別れてしまいました。
お互いがお互いをあまりにも、干渉してお互いを貪りすぎたせい?
ヴェトナム料理はとっても好きだけど、今では殆ど行く事も無くなりました。
先日、偶然見つけたアルバムの たった1枚きりの彼女の写真は、
今でもこれ以上幸せはないような顔をして微笑んでいますが。
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  1. 2008/05/27(火) 16:43:40|
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