シェフの戯言 黒いページ

リストランテ・ロアジのまわりで起きた様々な出来事を少し辛口につづってみました。

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教えてあげない、と言うか教えようが無い。

電話が鳴る。


イタリヤ料理を学びたいので、人は募集していませんか?との事。
学びたいのか働きたいのか訊ねると、学びたいとの事。
しかし。月額の最低給与は15万円以上は必要という。
なんで?と訊ねると、車のローンやら借り入れの返済で
支払いが最低10万円いるし、プラス生活費が(彼は親元に居ました)
最低5万円だそうです。


せっかく電話を貰ったのに期待に添えなくて残念だけど
今は人の募集はしていない事を告げました。

飛び込みで明後日、婚礼披露の食事会が入ったとする。
人数はご両家で24名、一人予算は飲み物込みで21000円だとする。
正味36時間しか時間的余裕は無いわけであるが
(別にケーキとお花で84000円)
1回のサーヴィスで少なくて588000円の売り上げになります。
これは受けないわけにはいきません。
我々にとっては年何回かの婚礼ですが、新郎新婦にとっては
多分?一生に一度の披露宴です、良きに付け悪しきに付け
一生涯記憶には残りますので、普段以上に斎戒沐浴
気合を入れて望まなければなりません。



とりあえず、メニューを決めて先方の了解を得て
その日の内に発注は済ませます。
それから仕込みを始めますが もちろん営業はしながらです。
一々その場になって原価計算を始めたり、婚礼の料理の
勉強を始めるわけにはいきません。


一人前のちゃんとした料理人になるためには、礼儀作法、一般教養
料理やサーヴィスの抜きん出た知識と技術、算数(できれば数学)
物理、化学、語学、社交性etc・・・。
何の仕事でも同じですが、かなりの知性と教養は要求されます。
ただ、何となくできるのも料理の仕事ですが 
ただ何となくではとってもなれないのも料理人です。


彼の電話の、学びたいから教えて欲しいという甘えがまず嫌でした。
本当に学びたいなら、自分の生活の安定などは二の次に考える事で
仕事も何にもできない人間が、仕事が出来て初めて要求できる
労働条件をはなから口にするのは、どれだけこれからの事に
覚悟があるのか疑問です。
見習いになったら、寝る暇や遊ぶ暇もないのに彼は
ローンで買った車で何処に行こうというのでしょうか?
親元に居て、家賃も食費も入れずに5万円も必要というのも解りませんでした。
多分身を粉にして何かを学ぶというのは無理でしょう。
安定志向なら、この仕事は無理です。


普通学びたいなら学校なりに行くべきでしょう。
どんな、田舎の調理師学校でも100万単位の年間の授業料は必要です。
お金を支払えば、学校には教える義務が発生します。
しかし、レストランで働く事と、学ぶ事は別のことでしょう。
レストランは給料を支払っている限り、彼は仕事をしてなんぼの世界です。
はっきり言って彼に働く義務はあっても私に教える義務はありません。
仕事も教えてもらって、はなから高給を要求する気持ちが知れませ
(何も出来ない若者に、と言うかじゃまになる若者に15万は多すぎます)
薄給で見習い期間辛抱できて、才能もあり努力もして
花形シェフになれば、女性にももてますし
同年齢のサラリーマンの3倍ー5倍の給料はざらにいます。
テレビにも出れますし、雑誌のグラビアを飾ったり
きれいなお姉さんのインタビューを受けたりもされます。
辛抱した分ぐらいは十分元は取れますよ。
(もう最近はどうでも良くなりましたが)
辛抱しなくて花形シェフになれるのは、花形レストランの子息だけです。


フランスやイタリアの星が3つも付いたレストランでは
スタジエと言うシステムがあります。
あこがれの三ツ星レストランの仕事は垣間見れますが基本無給です。
店によっては食費を取られるところもあります。
それですら、1年先まで希望者が山のように待っています。
本当に学びたい気があるならそうすべきでしょう。


幸い私は仕事が出来たので、スタジエはしなくて正規雇用でした
それでも、仕事をある程度マスターするまでは
部屋は横になれれば良い、食事はお腹が膨れれば良い。
給料はもらえないより もらえた方が良い程度の事しか考えていませんでした。
だから靴が破けようが、年がら年中同じ服だろうが気にはなりましたが
気にしない事にしていました。
そして、わずかばかりの給料も休みの日の
食べ歩き代、道具代、本代、氷の彫刻の氷代で全て無くなりました



それに、料理の仕事は基礎はある程度教えてあげられても
それ以降は自分で本当に学ぶ以外に無く、教えようも無いのです。
有名店のレシピー、レシピーと騒ぎますが、例えばモーツァルトの
ピアノ協奏曲 第一番の正確なスコアを持っていても
演奏者次第で天国と地獄なのは皆さん周知の事実であるが
料理も全く同じで、ピアノを弾きこなす技術と
曲を表現する深い感性が要求されるように、
調理する技術と料理を表現する感性は要求されます。


技術と感性は先天的な才能と後天的な努力が実って初めて開花します。
だから、料理の仕事は基礎以外教えようが無いのです
初めから才能の無い人、才能はあっても努力をしない人、
才能もなく努力もしない人は、どうしようもありません。
生き残れるのは、才能は無くても努力をする人か、才能があって努力をする人だけです。
(もちろん素晴らしい才能で努力を一切しなくても済む天才というジャンルはありますが)

23歳で車や他の事のローンで首が回らない若者は
あきらめないと仕方がありません、収入以上の生活をする人間には
しょせんはグランキュージニェー(偉大な料理人)にはなれません。
何となくできる料理の道を選んだ方が良いでしょう。



そうこうしているうちに、小倉の元弟子からご機嫌伺いの電話が
「ムッシューお元気ですか、10月に3人目の子供が生まれます」。
(なんだお祝いのおねだりかい?)
彼は10年才能は無くても私の元で努力を続けました、
今では小倉の大きな結婚式場の2番手です。
彼が見習いの時あまりにも厳しくしたのを少し反省しますが
それを耐え抜いて現在の彼があるのだと思うと、あながち私の
努力も無駄ではなかったかと思います。
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  1. 2008/10/02(木) 21:40:00|
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